人事労務担当者スキルアップ講座第1弾!『産業医の活用』

こんにちは、Tohands 産業医・精神科医の堤(@djbboytt)です。

本日は『産業医の活用』をテーマにお話します。

労働安全衛生法で、従業員50人以上の事業場(本社、支社、営業所など)では
産業医を選任することが義務付けられています。

義務だから当然産業医はいるけれど、

・どんな時に先生に相談していいのかわからない。
・ただ相談に乗ってくれるだけの存在?

とその活用について悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

この記事を読めば、企業の労務担当者がメンタル不調対策として「産業医をうまく活用」した取り組みを行うことができるようになります。

はじめに:労務担当者に必要な視点

突然ですが、あなたの職場にこんな人はいませんか?

遅刻がここ1ヶ月で10日も…

眠くて眠くてたまらない…また居眠りしてしまった…

**さんの仕事、期待より大きく下回ってるんだよなぁ。
サポートに追われて僕の仕事が回らないよ。

「こんな人も対象なの?」と驚かれた方もおられるのではないでしょうか。

そうなんです、産業医に相談する「メンタル不調」は、うつだけではないのです。

では、このような人のことを産業医に相談すると、産業医はどのように考えるのでしょうか。

・うつ病で朝起きられない?
・不眠症で、日中に眠気が強い可能性がある・・・
・うつ病で思考力が低下しているのだろうか。

このように、産業医は管理者などが把握した「職場で困っていること」
を専門家として判断していきます。

ここで大事なのは、労務担当者のあなたが、管理者などから

「勤怠が乱れているから是正してほしい。」
「パフォーマンスが低下しているので心配している。」

という話を聞いたとき、それはなぜか?という理由を聞いてみることです。
その理由が体調不良であれば、「体調不良によるものかもしれないから、
産業医の先生に相談してみましょう」と、産業医につなぐことが大切なのです。


STEP1:職場の困りごとが「体調不良」から来ていないかをチェック!

ではここからは、事例を用いてSTEPを追っていきましょう!

労務担当のあなたに、とある部署の課長さんから相談がありました。

じつはうちの課にいる、社員のAくん、業績がここのところ非常に落ち込んでいるんだ。どうしたもんかね…

話を聞けば、Aさんの業績は確かに落ち込んでおり、これまでと比べ、70%ほどの働きに留まっているようです。

それを聞いたあなたは、面談を設定。話を聞くことにしました。

最近寝つきが悪くて、仕事中も身が入らないんです。
ボーっとしてしまうことが増え、だるさがある
自分でも理由がよく分からず、困っているんですよ…

寝つきの悪さや、だるさがあるという事実が確認できたため、
あなたはAさんを産業医につなぐことにしました。

産業医との面談日を調整し、無事Aさんの面談は終了。


産業医は、Aさんの状態を

メンタル不調により思考力の低下はありますが、治療のためだけに今すぐ休むレベルではありませんね。

と評価しました。


STEP2:ゴールを決めて、共有しよう

産業医の評価を受け、Aさん・課長・産業医の3者でゴールを設定することに。
ゴールを設定するには、3者の意見をすり合わせることが大切です。
3者の意見はこうでした。

治療と仕事を両立しながら体調を回復させたい

できるだけ早く職位相当の仕事をできるようになってほしい。しかし体調面が悪化するなら休んでほしい。

いまの体調なら仕事をしながら治療をすることは可能だが、完全に戻るには2-3カ月はかかるだろう。

ここでの注意点は
★健康に留意すること
★でも、過剰な配慮をしすぎないこと

この例ではすり合わせの結果、


「3カ月間は残業無しで70%の業務量。ただしさらにパフォーマンスが低下したり、体調が悪化したりすれば速やかに休んで治療に専念する。また3カ月たってもパフォーマンスが職位相当にならなければ、治療に専念するか、職位を見直す」


というゴールを設定・共有しました。

もしどうしても体調がすぐれず健康面の不安が強かったり、周囲へ過重な配慮を必要としたりする場合は休養してもらい、復職のゴールを再設定することも考えられます。

このゴールの設定には3者それぞれの考えのすり合わせが重要です。
※このすり合わせがうまくいかずギャップが残るとトラブルに発展するので
丁寧に行なっていきましょう。


STEP3:役割分担を明確化する

 ゴールを設定した後はそれぞれの役割を明確化してその役割をこなしていきます。

仕事と治療に真摯に取り組む

勤怠やパフォーマンスを評価し、日ごろの様子を観察する

定期的に当事者の健康状態を確認し、現場から気になる様子があればサポートする

この役割分担が明確になっていないと、ゴールへの到達具合が分からなくなったり、健康管理に最も責任を持つべき当事者が

「体調が悪いのだから会社にもっと配慮してほしい」

という風に歪みが生じたりします。

ここでの産業医はあくまで裏方です。

本人の健康状態を適宜把握してもらい、職場と本人が安心できるような助言をしてもらいましょう。


4.さいごに

 いかがでしたか?

もしも産業医との連携がうまくいっていなかったり、メンタル不調者対応に悩んでいたりしたら、今回のSTEPを参考に取り組んでみてください。

産業医とこのやり方を共有しておくと効率も効果も飛躍的に高まります。

実務においては様々なシチュエーションがあり、判断に悩むことも多々あると思いますが経験を積むうちに自然とできるようになります。

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