はじめに
Afterコロナ時代は、健康経営が見直される時代にもなります。
働き方において様々な変化が起き従来の健康経営の概念が変わり、さらに健康の価値が再認識されるからです。
例えばテレワーク等が一般化し、働き方の自由さと人材の流動性が増していくでしょう。
さらに、産業構造の変化によって、個人の能力=人財の力こそが企業の価値を決定づける大きな要因になります。
そこで、今回は健康経営という文脈の中で、いかにして貴重な人材を守り抜くか=「人財保全」というキーワードを用いて、経営者や人事、労務、産業医や保健師などが考えていくヒントをお伝えできればと思います。。
1~3は背景などについて論じているので、時間のない方は 4.「人財保全」~健康経営の本質~ 以降だけでも読んでみてください。
本章を読んでいただいて、これから先の時代を安心して駆け抜ける助けにしていただければ幸いです。
ちなみに今回触れた内容はこちらのオンラインセミナーでさらに詳しくお話しします。ご興味のある方はぜひご参加下さい。
https://peatix.com/event/1486810
1.健康経営とは?
健康経営の本質はずばり経営戦略の一環です。
「社員みんなが健康で長く働いてくれたら生産性は上がるよね。だから社員の健康を企業が守ろうよ」という考え方です。
アメリカでは1990年代から、日本では2000年代後半から広がり始め、2014年には健康経営銘柄が選定され始めました。
健康経営の事例として有名なものは、ジョンソン・エンド・ジョンソンのものがあります。この事例では
健康経営への投資が1.88~3.92倍のリターンになる
と報告されています。 (Astrella JA 2017)
金銭的なリターンのみならず、モチベ―ションの向上、企業のイメージ向上、人材の確保など多角的な効果が期待されているのが健康経営です。
そして、Afterコロナ時代においてはさらにこの健康経営が注目されていきます。
2.Afterコロナ時代に健康経営が注目される理由
なぜ、Afterコロナ時代に健康経営がさらに注目されるのか?それにはいくつかの要因があります。
- 生産人口が減少していくから
- 産業構造の変化によって、ヒトそのものが企業価値を決定づけるから
- コロナによって健康や衛生の価値が再認識されたから
そして、、、
・企業による健康管理の概念が変化するから
上記が要因として挙げられます。
まず前者2つを簡単に説明します。
ご存じの通り少子高齢化によって、日本の生産人口は減少の一途をたどっています。そのため、一人一人がすこしでも健康に長く働いていくことが重要になります。
さらに産業構造が1次、2次、3次産業へと比重が移り変わり、情報産業などの比重が高まっています。情報産業は個人のアウトプットの差が顕著な差となって現れます。そのためヒトそのもの=人財を守るすべとしての健康経営が重視されます。
さらに3つ目の理由、今回のコロナでは健康や衛生の価値が再認識されました。世界中のみんな、それこそ経済界の重鎮でさえも「健康第一」を考えました。
わかりやすく例えると、みんなの考えが「健康・衛生を軽視する会社には入りたくない」「そんな会社とは取引したくない」に変化していきます。
余談ですが、この話はコンピュータウイルス対策などの情報セキュリティにもよく似ています。
情報ダダ洩れの会社とはだれも関わりたくないですよね?自分や自社にも影響が及ぶからです。
3.健康管理の概念が変わる
先ほど挙げた、4つ目の理由「 企業による健康管理の概念が変化する 」について詳しくお話しします。
(*少しマニアックな話ですが、ここでの健康管理は3管理における健康管理でなく、より広義に「社員の健康・安全を守るもの」とご理解下さい)
いままでのやり方が通用しなくなるからこそ注目を余儀なくされるとも言えます。
現行の健康管理といえば、健康診断が真っ先に浮かびます。少し広義にとらえると、労働時間の管理や事故を起こさないための作業場の管理なども該当します。
しかしAfterコロナ時代はこのやり方が通用しなくなる部分が出てきます。
その理由は以下です。
①テレワークや在宅勤務が普及するから
②副業解禁などを含めた働き方の自由度が増すから
①テレワークや在宅勤務が普及するから
まず、間違いなくテレワークや在宅勤務は普及する流れになります。これは多様な人材の確保や生産性の向上、さらには感染症対策や災害対策として必然の流れです。
人材の確保を至上命題としたとき、遠く離れた土地に住む人材や、種々の事情により出社が困難な人材に活躍してもらうためには、テレワークや在宅勤務の導入が必須となります。おそらく障がい者雇用などは在宅やテレワークが前提として語られるケースも出ると思います。(ちなみにこれに伴って障がい者雇用、ひいては障がい者の定義さえ変わりえるのですが、これはまた別の機会に)
そして、なにより今回のコロナのような感染症や、2019年秋の大型台風などでは一極集中の危険性が露見しました。感染症の予防や危機管理の文脈からも、働く場所の分散=在宅勤務やテレワークは進むでしょう。
テレワークが進むと、健康管理のうち、いわゆるラインケア(管理者におけるケア)における「見る、聞く、つなぐ」などの従来のやり方が通用しなくなります。
たとえば、社員に健康問題があるときに見つけやすいものとして、私は「KAPE」という言葉を使っています。
それぞれ、
K:勤怠が乱れてないか 、 A:安全に勤務できているか 、P:パフォーマンスがおちていないか 、E:(周囲への)影響がないか
です。
しかしテレワークではいずれも見えずらくなります。
K:勤怠はテレワークでは意識しないと見えません。PCのログを取る、アクティブ時間を計測するなどの方法はあるものの、コストと労力を要します。
A:安全もそもそも、目の前に従業員がいるときにこそ見えてくるものです。結果を主にみることになるであろうテレワークでは見えずらいものになります。
P:パフォーマンスは成果物を見れば一定わかりますが、どれだけ時間をかけているかなどの効率の部分は見えずらくなります。
E:影響は周囲の人とのやりとりで見えてきますが、こちらも意識しないと見えてこなくなります。
ラインケア一つとってもこれだけの変化が起きてきます。
②副業解禁などを含めた働き方の自由度が増すから
おそらく今後は様々な要因から副業解禁など働き方の自由度が増していきます。
働き方改革関連法案の目玉の一つとして、長時間労働の抑制があります。しかし副業解禁に伴って、労働時間理や責任の所在は非常に難しくなります。
そもそも、今後時間をかけてではありますが、人事評価制度が成果型に変化していくと思われます。
変な妄想ですが「1億総個人事業主」ないしは才能を武器にした「1億総タレント化」も起きるんじゃないかなと思います。
そんな中で労働時間管理を中心とした健康管理は無理が出てきます。
4.「人財保全」~健康経営の本質~
このような状況下では、従来のラインケアや労働時間管理などといった健康経営の方法論はその効果が弱まってしまいます。
そこであらためて健康経営の本質を考えてみましょう。
健康経営の本質、それは「人財保全」です。
つまり、働く人を守っていきましょうというものです。
人材保全を推し進める方法の一つは、一見矛盾するようですがセルフケアを推し進めることだと思います。そして企業は個々人に応じた細やかなマネジメントが求められるでしょう。
これからは「みんな同じ場所で、同じ時間に働いて、同じように休みを取っていた」ものが「みんな違う場所で、違う時間に働いて、全く違う休みの使い方をする」ようになります。
こうなると、画一的な管理は全く意味を成しません。個々人が最大限セルフケアをして、その助けを企業がしていくとともに働き方に応じたマネジメントをしていく形になるでしょう。
もう一つ視点があります。 テレワークなどを含めた働き方の多様性や副業解禁などによってこれからは働く人の個別性が非常に重要になります 。
今回のコロナによる緊急的な在宅勤務導入では、不調に陥った人がいた一方、非常に快適に働くことができていたことも事実です。
一人一人にとってどんな働き方がベストなのか考える必要があります 。
5.おわりに
長々と話してきましたが
・セルフケア
・セルフケアを推進するため企業の取り組み
・働き方に応じたマネジメント
・個別性に合わせた働き方の提供
この4つが少なくとも人財保全のキーワードになると思っています。
それぞれの方法論はものすごく長くなってしまうので、セミナーで触れていくとともに、今後ブログで公開していきたいと思います。
このブログが少しでも皆さんのお役に立てばいいなと思います。
また弊社では、ストレスチェックや産業医紹介、産業医業務サポート、各種オンライン研修などで健康経営・人財保全のお手伝いを提供しております。ぜひご活用ください。
資格:労働衛生コンサルタント、メンタルヘルス法務主任者、精神科専門医、産業衛生学会専攻医、医学博士等 / 対応可能エリア:東京近郊 / 得意とする業務・業種:メンタルヘルス対応全般 / コメント:企業の経営に寄与し、企業と働く人の幸福にコミットします。